2023/09/28 訪問介護

【2024年4月義務化!】訪問介護のBCP(業務継続計画)とは?

訪問介護のBCP(業務継続計画)とは?

 

BCP策定が義務化されるって聞いたけど…。

 

そもそもBCPってなに?

 

どんなものなのか全然わからない…。

 

BCPは業務継続計画のことですが、言われてもピンときませんよね。

 

そこで今回は、訪問介護のBCPとは何かから作成のポイントまで幅広く解説します!

 

 

BCPとは?

BCPとは?

 

BCP(Business Continuity Plan)は、ビジネス・コンティニュイティ・プランの略であり、企業や組織が直面する様々なリスクや危機、例えば自然災害や感染症の流行などの異常事態が発生した際に、その業務を継続するための計画や手順を示したものです。

 

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを業務継続計画(BCP)と呼ぶ

 

BCPの主な目的は、事業の中断を最小限に抑え、組織の存続と利益の確保を目指すことです。

 

また、ご利用者様へのサービス提供を継続し、信頼関係を維持することも重要な目標となります。

 

この章では、訪問介護のBCPについて詳しく解説します。

 

 

訪問介護におけるBCPとは?

訪問介護におけるBCPは、自然災害や感染症の拡大などの緊急事態が発生した場合に、ご利用者様へのサービス提供を継続するための具体的な計画や手順を示したものです。

 

訪問介護は、ご利用者様の自宅を訪れて、日常生活のサポートをするサービスです。

 

このようなサービスは、ご利用者様の生活の質や安全に直接的に影響するため、異常事態が発生した際の迅速な対応が求められます。

 

以下は、訪問介護におけるBCPの主な内容です。

 

 

資源の確保:介護サービスを中断させないためには、介護サービスを提供するために必要な資源を守ることが重要です。サービス提供に必要な資源として、職員、建物・設備、そしてライフライン(電気・ガス・水道)があります。
サービス中断からの復旧:速やかな復旧のためには、職員の不足やライフラインの停止を踏まえ、重要業務に優先して取り組める計画が必要です。

 

訪問介護におけるBCPは、ご利用者様の安全とサービスの質を確保するための重要なツールとなっています。

 

事業者は、BCPを策定し、常に最新の情報や状況に合わせて更新することで、ご利用者様への信頼を維持し、サービスの継続性を保つことができます。

 

また、BCP策定は義務化されることになっており、2024年4月からすべての介護事業者が非常事態に備えておかなければなりません

 

義務化に対応し、ご利用者様の生活を守るためにも早めにBCPを策定しましょう。

 

 

自然災害BCP

自然災害BCP

 

日本は地震や台風などの自然災害が多い国です。

 

特に訪問介護のようなご利用者様の生活に不可欠なサービスは、自然災害が発生した際の迅速な対応が求められます。

 

そのため、自然災害に特化したBCPの策定は不可欠です。

 

この章では自然災害BCPにおける

 

  • 平常時の対応
  • 緊急時の対応
  • BCP作成のポイント

 

を紹介します。

 

 

平常時の対応

自然災害BCPは日常からの準備が必要不可欠です。

 

地震や台風、津波などの災害に対する日常の備えが、緊急時に迅速かつ適切に行動するための基盤となります。

 

平常時に準備しておくことは以下の通りです。

 

建物・設備の安全対策 事業所の耐震補強はもちろんのこと、ご利用者様の自宅でも消火器などの設備の収納場所を確認しておく。
ライフライン停止への対策 電気が止まった場合には、乾電池や手動で稼働するものを使う。また自家発電機がある場合は稼働させる設備の優先順位を考えておく。
都市ガスが止まった場合には復旧まで1ヶ月程度かかることもあります。調理用にはカセットコンロ、冬場であれば、毛布や使い捨てカイロを準備しておく必要があります。
水道が止まった場合には飲料水と生活用水が必要です。飲料水は消費期限までに買い替えるなど定期的に確認し、生活用水は給水車から給水を受けられるよう、ポリタンクなど十分な大きさの器を準備しておくことも重要です。
通信が途絶えた場合の対策 サービス提供中に被災した場合に備え、緊急連絡先は、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておく。
システムが停止した場合の対策 パソコンやサーバーは定期的にバックアップを取る。
衛生面の対策 排泄物や使用済みのオムツなどを衛生面に配慮し、一時的に保管する場所を決めておく。
必需品の備蓄 行政支援開始の目安である被災後 3 日目まで、自力で業務継続するため備蓄を行う。必要なものはリスト化し、賞味期限など定期的に確認する。
関係各所との連携 避難先においてサービスを提供することも想定されるため、地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(行政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を作る。

 

 

緊急時の対応

自然災害が発生した際は、ご利用者様や訪問中、移動中のスタッフの安全のため迅速な対応をしなければなりません。

 

そのためにはBCPを発動する基準を決めておく必要があります。

 

地震の場合は、対象地域や震度を基準に、水害の場合は、警報や注意報を基準にしましょう。

 

安否確認の方法や連絡先は「携帯カード」にまとめてスタッフが携帯しておくと移動中などの状況でも速やかに対応できます。

 

ご利用者様の安否確認もスムーズに行うため、担当者を決め、安否確認シートを準備しておきましょう。

 

災害時にはインフラの停止や職員不足から業務量が増大することが考えられます。

 

ご利用者様の生命・健康を維持するためには食事・排泄・与薬などが特に重要業務になりますが、職員数によっては手順を見直したり代替方法が必要なこともあります。

 

居宅介護支援事業所や地域の関係機関と連携し、可能な限り早くサービス提供を始めることが大切です。

 

自然災害BCP作成のポイント

自然災害BCPを策定する際には、ただ単に計画を書き留めるだけではなく、実際の災害時に有効に機能するような計画を作成することが求められます。

 

災害発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。

 

またBCP は、作成するだけでは機能しません。

 

研修での周知やシミュレーションを行い、最新の知見を踏まえて内容を見直す必要もあります。

 

以下は、自然災害BCPを策定する際の主要なポイントです。

 

  • 各担当者をあらかじめ決めておくこと
  • 連絡先をあらかじめ整理しておくこと
  • 必要な物資を整理、準備しておくこと
  • 上記を組織で共有すること
  • 定期的に見直し、研修・訓練を行うこと

 

 

感染症BCP

感染症BCP

 

近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行をはじめ、さまざまな感染症が世界的に拡大しています。

 

感染症の拡大は、訪問介護サービスにも大きな影響を及ぼし、事業の継続やご利用者様の安全確保に対する新たな課題となっています。

 

そのため、感染症に特化したBCPの策定は不可欠です。

 

この章では感染症BCPにおける

 

  • 平常対応
  • 初動対応
  • BCP作成のポイント

 

を紹介します。

 

平常対応

感染症に対する平常時の対応は感染症が流行していない時期でも継続的に行われるべきものであり、緊急時に迅速かつ適切に行動するための基盤を築く役割を果たします。

 

平常時にしておくべきことは以下の通りです。

 

 

体制構築 誰が、何をするかを決めておき、関係者の連絡先、連絡フローの整理を行う。
感染防止策 感染症に関する最新情報の収集、手指消毒・換気等の基本的な対策、体調管理を行う。事業所に出入りした人の記録も取っておく。
防護具、消毒液等備蓄品の確保 感染疑いの方の対応等で使用量が増加することを考慮し、数日分は確保しておく。
研修・訓練の実施 BCPの内容を共有し、研修や訓練を行う。
検証・見直し 最新の動向や訓練等で洗い出された課題を BCP に反映させる。平常対応は、感染症の拡大を防ぐための基盤となる取り組みです。

 

これらの対応を徹底することで、緊急時にも迅速かつ適切に対応する体制を整えることができます。

 

初動対応

感染症が発生した際の初動対応は、その後の展開を大きく左右する重要なフェーズです。

 

初動対応としてすべきことは以下の通りです。

 

  • 報告・連絡

 

・管理者等への報告
・地域で身近な医療機関、受診・相談センターへ連絡
・事業所内での情報共有
・事業所のある市町村を管轄する自治体に報告
・居宅介護支援事業所へ報告
・ご家族様へ報告感染疑い者への対応

 

居宅介護支援事業所等と連携し、サービスの必要性を再度検討の上、感染防止策を徹底した上でサービスの提供を継続する。

 

担当スタッフをわけたり、最後に訪問するなど感染には細心の注意を払う。

 

連絡した医療機関、受診・相談センターの指示に従い、医療機関のへ受診等を行う。

 

感染症BCP作成のポイント

感染症BCPでは、ご利用者様またはスタッフが感染した場合でも継続してサービス提供できる仕組みを作ることが大切です。

 

以下は、感染症BCPを策定する際の主要なポイントです。

 

  • 事業所内を含めた関係者との情報共有のため、連絡先や連絡フローを整理すること
  • 全体の意思決定者を決め、各業務の担当者を決めることで、役割分担・判断ができる体制を構築すること
  • 感染者発生時の対応を整理すること
  • 可能な限りの職員の確保と、関係団体や都道府県等、応援依頼できる場所を把握すること
  • 職員が不足した場合にも可能な限り通常通りのサービス提供できるよう業務の優先順位を整理すること
  • BCPは関係者への周知、研修を徹底し最新の知見等を踏まえ、定期的に見直すこと

 

 

自然災害BCPとの違い

自然災害BCPとの違い

 

感染症BCPと自然災害BCPは、それぞれ異なるリスクに対応するための計画です。

 

自然災害と感染症の被害の主な違いは以下の通りです。

 

自然災害 感染症
被害の対象 地震、台風などの自然災害による設備やインフラの被害 感染症の流行による人への被害
被害の範囲 突発的に局所的に発生する 海外で発生した場合には日本で発生するまで期間があり、被害は全世界に及ぶ
被害の期間 数日から数週間、長くても数ヶ月に限られることが多い 数週間から数ヶ月、場合によっては数年にわたって続くことがある
被害の規模 制御不可能 感染防止策により左右される

 

以上のことから感染症BCPにおける自然災害BCPとの違いは

 

  • 情報
  • ヒト
  • 感染防止策

 

であるとわかります。

 

感染症BCPに必要なことは以下の3つです。

1. 正確な情報を入手し、都度判断する
2. サービスを継続するにはヒトをやりくりする
3. 感染防止策を徹底する

 

 

まとめ

まとめ
訪問介護のBCP策定は、私たちが直面するさまざまなリスクに備え、ご利用者様の安全とサービスの継続性を確保するための重要な取り組みです。

 

この記事を通じて、感染症や自然災害にどのように対応すべきか、そしてその策定のポイントを学ぶことができました。

 

日常の業務だけでなく、緊急時の対応もしっかりと考え、事前に計画を立てることで、突然の危機にも冷静に対応できるようになります。

 

あなたがこの記事を読んで、少しでも「訪問介護のBCP策定」に対する理解が深まったなら大変嬉しいです。

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