「身体介護って具体的にどんなことをするんだろう?」
「食事介助や排泄介助はよく聞くけど、他にもあるのかな?」
「掃除や洗濯とは違う?」
訪問介護の仕事をしようと思っても、内容がわからないと不安ですよね。
せっかく介護を始めても、思っていた仕事と違ってすぐに辞めてしまうなんてことになるかも…。
そこで今回は、介護一筋50年のアサヒサンクリーンが訪問介護の身体介護について詳しく解説します!
全部読むと、訪問介護の職場選びに失敗しなくなります。
訪問介護の身体介護とは?
訪問介護は、ご利用者様が自宅での生活を継続するためのサポートをするサービスです。
その中でも「身体介護」は、ご利用者様の身体に触れ、直接介助をするサービスのことを指します。
例えば移乗、食事、入浴、排泄、着替えなどの日常的な動作のサポートが身体介護に含まれます。
訪問介護の身体介護は、ご利用者様の自宅を訪れ、身体的な状態やニーズに応じて、最適な方法での介助を行うことが求められます。
また、単に身体的なサポートだけでなく、ご利用者様に安心して任せていただける信頼関係、心のケアやコミュニケーションも重要な役割となります。
適切な介助をすることで、ご利用者様の生活の質を向上させることもできるのです。
身体介護の内容
この章では、訪問介護の中での身体介護の具体的な内容について詳しく解説します。
身体介護の内容は多岐にわたりますが、主な内容として
- 移乗介助
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 着替え介助
- 歩行介助
- 体位変換
- 口腔ケア
- 服薬介助
を解説していきます。
移乗介助
移乗介助は、ご利用者様がベッドから車椅子などへ、安全に移動するためのサポートのことを指します。
自力で移動することが難しいご利用者様にとっては、車椅子に乗ること一つとっても転倒などのリスクがあります。
適切な移乗介助は、ご利用者様の安全を確保するとともに、生活の質を向上させるために不可欠なのです。
移乗介助はなくてはならないサービスですが、ご利用者様の身体をを支える介護士にとっては腰痛になるリスクがあります。
腰痛にならないためにはボディメカニクスを使った介助をする必要があります。
例えば、移乗介助で意識することは以下の3つです。
✓足を開いて重心を低くする
✓ご利用者様の重心と近づける
✓持ち上げず、水平に移動する
移乗の際は、ご利用者様の安全と快適さを最優先に考えることが重要です。
また、スライディングボードなどの移乗ツールを使うことで、より高品質なサービスを提供することができます。
食事介助
食事介助は、利用者が適切に食事を摂取できるようサポートすることです。
高齢になると、飲み込む機能が低下したり、握力が低下しお箸などをうまく持てなくなることもあります。
しかし食事は生命を維持するために必要不可欠なもの。
自宅で生活するご利用者様にとって食事介助はなくてはならないサービスなのです。
また、食事介助をする際には誤嚥しないよう注意すべきことが3つあります。
1.食事の姿勢
・椅子に深く座る
・両足はかかとまで床につける
・あごを引く
2.一口の量
・一般的にはティースプーン1杯程度
3.ペース
・次の一口の前に口の中に食べ物が残っていないか確認
食事介助の際は、ご利用者様の状態をしっかりと把握し、その人に合わせたサポートを心掛けることが重要です。
また、食事の時間を楽しいものにするためにコミュニケーションを取るのも良いでしょう。
入浴介助
入浴介助は、ご利用者様が安全かつ快適に入浴できるようサポートすることです。
入浴は、身体を清潔に保つだけでなく、リラクゼーションや心身のリフレッシュのための重要な時間です。
訪問介護の入浴介助では、訪問介護員が一人で準備から、実施、片付けまで行います。
似たサービスに訪問入浴がありますが、訪問入浴の場合は専用の浴槽を使って介護士2名と看護師1名で行います。
入浴介助の際に気を付けるポイントはご利用者様をさまざまなリスクから守ることです。
- ご利用者様の体調
主治医からの入浴許可ももちろんですが、必ずバイタルチェックを行い、当日の体調を確認します。
また、冷えないように椅子を温めたり、お湯をかけるときは驚かないよう声をかけるようにします。
- 転倒
滑り止めマットや手すりを使用し、転倒のリスクを減らしましょう。
入浴介助の際は、安全に配慮し、ご利用者様がリフレッシュできるよう考えることが重要です。
排泄介助
排泄介助では、ご利用者様の排泄に関するサポートをします。
ご利用者様の介護度によって、トイレ利用のサポートをしたりオムツ交換をしたりと内容はさまざまです。
ですが、どちらであってもご利用者様のプライバシーを尊重しつつ、適切なサポートをすることが必要です。
絶対にやってはいけないのは、急かすこと。
また、下着が汚れていないか、皮膚が清潔になっているかも確認し、肌トラブルを防ぎましょう。
排泄介助を行う際は、ご利用者様自身でできることはしてもらい、必要に合わせたサポートを心掛けることが重要です。
着替え介助
着替え介助は、ご利用者様の衣服の着脱に関するサポートです。
特に、まひなどがある方にとっては着替えは難しく転倒やけがのリスクもあります。
高齢になると皮膚が乾燥しやすく薄くなるため、衣服との摩擦で皮膚がさけてしまうなんてことも。
着替え介助をする際には、ご利用者様の動きに合わせ、ゆっくりとした動作でサポートすることが大切です。
プライバシーを尊重し、他者の視線を避ける環境を作ることもポイントです。
歩行介助
歩行介助は、ご利用者様が安全に移動や歩行を行えるようサポートすることです。
自力での歩行が困難なご利用者様にとっては、トイレや浴室までの数メートルであっても移動がたいへん。
歩行介助は、そんなご利用者様の自立のサポートに直結します。
例えば、ふらつきがあるご利用者様に対しては、いつでも支えられる位置で見守りながら一緒に歩きます。
歩く速さは、ご利用者様に合わせ、急かさないようにします。
つまづきそうなものやコードがないか、確認しておくことも大切です。
歩行介助の際は、無理に手を引いて急いだりせず、可能な限りご利用者様自身で歩いていただくことが自立につながります。
体位変換
体位変換は、利用者の身体の位置や姿勢を変えることで、主に寝たきりのご利用者様に対して行います。
長時間同じ姿勢でいると、血流が悪くなることによる褥瘡などの皮膚トラブルや、筋肉の硬直など、健康を害するリスクがあります。
特に褥瘡は3~4時間同じ部分に圧力がかかることで発生する可能性も。
ご利用者様の体調を考慮し、適切なタイミングで体位変換を行いましょう。
クッションなどを使用し、同じ部分に圧力がかかりすぎないようにすることも大切です。
口腔ケア
口腔ケアは、利用者の口の中を清潔に保ち、口腔内の健康を維持するためのサポートです。
口の中の健康は、全身の健康に直結しています。
誤嚥性肺炎などの病気だけでなく、心臓疾患や動脈硬化にも関わっていると言われています。
食後はもちろん、誤嚥性肺炎の予防に効果的な食前、口の中の細菌が最も多い起床時に口腔ケアをするのもオススメです。
胃ろうのご利用者様の場合には、栄養注入から一定の時間を空ける、栄養注入前にするなど誤嚥を防ぐ工夫が必要です。
口腔ケアを行う際は、ご利用者様の口腔内の状態を確認し、歯ブラシだけでなく歯間ブラシや舌ブラシなども使うようにしましょう。
また、痛みがあるなど専門的なケアが必要な場合は歯科医に相談してください。
服薬介助
服薬介助として介護士が行えるのは、一包化された薬の準備、服薬の声かけ、飲み残しがないか確認、後片付けをすることです。
服薬後の体調や反応を確認し、異常があれば速やかに医師や薬剤師に相談することも服薬介助の一環です。
しかし、服薬介助として介護士には行えないこともあります。
例えば、PTPシートから薬を出したり量を調整するのは医療行為になるため介護士は行えません。
飲む量やタイミングを間違えないためにも薬は一包化してもらうことをオススメします。
他にも、状態が安定していない場合や、誤嚥など専門的な配慮が必要な場合も介護士は服薬介助を行えません。
服薬介助を行う際には、医師の指示を確認し、副作用などご利用者様の薬に関する知識をもっておくとより良いサービスを提供できます。
身体介護の区分
訪問介護の身体介護は、4つの区分にわけられており、それぞれ単位が設定されています。
以下は、身体介護の時間に応じた単位の詳細です。
提供時間 | 単位 |
20分未満 | 167単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 |
30分以上1時間未満 | 396単位 |
1時間以上 | 579単位(30分を増すごとに84単位追加) |
また、訪問介護には2時間ルールがあり、一人のご利用者様に対しての訪問サービスは2時間以上間隔を空けなければなりません。
この表と2時間ルールを参考に、ご利用者様の状態に合わせた、適切な時間配分でのサービスを提供することが求められます。
身体介護に必要な資格
訪問介護で身体介護のサービスを提供する際には、介護職員初任者研修以上の資格が必要です。
なぜなら身体介護には一定の知識や技術が求められるためです。
資格が必要な仕事なら始めるのは難しそうと思うかもしれませんが、社員教育や資格取得の支援に力をいれている企業も数多くあります。
求人票で確認したり、面接で聞いてみると良いでしょう。
また、介護職員初任者研修は受験資格がなく誰でも受けることができます。
これから介護の仕事を始める方には初任者研修の資格を取得するのがオススメです。
身体介護と生活援助の違い
訪問介護には身体介護と生活援助がありますが、この2つは大きく異なるものです。
この章では、
- 行動
- 技術
- 目的
の3つの観点から違いを解説します。
行動の違い
身体介護と生活援助は、どちらもご利用者様の日常生活をサポートするためのものですが、介護士が行う行動は異なります。
身体介護:ご利用者様の身体的な動作や機能に関連するサポートが中心
具体的には、ベッドから車椅子などへの移乗、食事や入浴のサポート、排泄のサポートなどご利用者様の身体を直接サポートします。
生活援助:ご利用者様の日常生活全般のサポートが中心
具体的には、掃除や洗濯、料理などの家事、買い物などを行います。
ご利用者様に直接関わる身体介護には資格が必要ですが、生活をサポートする生活援助には必ずしも資格は必要ではありません。
技術の違い
身体介護と生活援助は、それぞれ異なる技術や知識を必要とします。
これらのサービスを提供する際には、ご利用者様のニーズに合わせた技術が求められるため、違いを正確に理解することが重要です。
身体介護:ご利用者様の身体的な動作や機能をサポートするための基本的な技術が必要
ご利用者様の安全ももちろんですが、サービスを提供する介護士にとっても技術は大切です。
一つ一つの介助で身体を痛めない、腰痛にならないために、ボディメカニクスを意識しましょう。
生活援助:ご利用者様の日常生活をサポートするための技術が必要
主に家事のスキルが必要となります。
基本的な料理の手順や、洗濯物の取り扱いなど日常で身につける知識や技術が活かせます。
これらの技術の違いを理解し、それぞれのサービスにおいて必要な技術を習得することで、ご利用者様に適切なサポートを提供することができます。
目的の違い
身体介護と生活援助は、それぞれ異なる目的を持ってサービスが提供されます。
これらのサービスが持つ目的を理解することは、ご利用者様に適切なサポートを提供するための基盤となります。
身体介護の主な目的:ご利用者様の身体的な健康や機能の維持・向上を中心としたサポートを提供すること
ご利用者様が持っている身体的な能力や機能を維持するため、できることはご本人にしてもらい、できない部分をサポートします。
生活援助の主な目的:ご利用者様の生活の質を確保するために日常生活を支援すること
健康を維持するため栄養を考えた料理をしたり、ご利用者様の部屋の掃除をしたりします。
まとめ
皆様、訪問介護の身体介護に関するこの記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
身体介護は、訪問介護の中でも特に重要な役割を果たしています。
この記事を通じて、身体介護の具体的な内容や、必要な資格、生活援助との違いをしっかりと把握していただけたでしょうか。
正しい知識を持つことで、ご利用者様にとって最も適切なサポートを提供できるでしょう。
訪問介護の身体介護の大切さを再認識し、日々の生活や業務に活かしていただけると幸いです。