「訪問介護の生活援助の制限がいまいちよくわからない…。」
生活援助って、時間や回数のしばりがあってわからづらいですよね。
ただ、しっかりと理解してない状態でサービスを提供して制限を超えると限度額をオーバーしてご利用者様の負担になる可能性も…。
またはケアマネから指摘をうけてしまい、信頼を損ねることすらありえます。
ということで今回は、介護業界で走り続けて50年の弊社が、訪問介護の生活援助で気になる時間区分や回数、具体的な内容まで網羅的に解説します。
本記事を何度も読み返してしっかりと理解してもらうと、現場でも違和感をもたず気持ちよくサービス提供ができるようになるはずです(*^^*)
それではまいりましょう!
訪問介護の生活援助とは?
訪問介護の生活援助とは、ご利用者様が自宅で自立した生活を送るために家事など身の回りのサポートをするサービスです。
今、日本の高齢化が進む中、自宅での生活を継続したいと希望する人が増えています。
しかし、加齢や病気により、日常生活の中で家事など全てを自分で行うのが難しい場合も。
例えば、ご家族様と一緒に住んでいる場合は、家事も分担でき、ご利用者様自身でできる部分だけを選ぶことも可能ですが、一人暮らしの場合はどうでしょう。
生活援助がなければ、すべての家事を一人でしなければなりません。
訪問介護の生活援助は、自宅での生活を続けたいご利用者様にとって、なくてはならないサービスなのです。
訪問介護生活援助の時間区分
訪問介護の生活援助は、1回どれくらいの時間なのか、また1日に何回サービスを受けられるか、気になりますよね。
この章では、生活援助の時間に関する具体的な単位数と、1日に受けられる回数について解説します。
生活援助の単位数
生活援助の時間の単位数は、「20分以上45分未満」と「45分以上」の2つに区分けされています。
単位数は以下の通りです。
生活援助中心型 | |
20分以上45分未満 | 183単位 |
45分以上 | 225単位 |
例えば、料理のみや掃除のみの場合は20分以上45分未満のサービスになります。
他の家事と組み合わせるなど、時間がかかる場合は45分以上になります。
生活援助では45分以上のあとは上限が設定されていませんが、1回のサービスでは60分以内にしている事業所が多いようです。
生活援助の時間はご利用者様の状況に合わせ「20分以上45分未満」か「45分以上」の区分を適切に選ぶ必要があります。
一日に生活援助を受けられる回数
一日に生活援助を受けられる回数に制限はありません。
ご利用者様はケアプランに定められた必要な分のサービスを受けることができます。
しかし、ひと月ごとの生活援助の回数は要介護度ごとに決まっています。
要介護度と回数は以下の通りです。
要介護度 | 回数上限/月 |
要介護1 | 27回 |
要介護2 | 34回 |
要介護3 | 43回 |
要介護4 | 38回 |
要介護5 | 31回 |
また、上記の回数だけでなく、2時間ルールにも注意が必要です。
1人のご利用者様に対して、1度訪問してから2時間以内に再度訪問すると、同一サービスとみなされます。
例えば、10時に訪問し日用品の買い出しと洗濯を45分と、11時半に再度訪問し掃除と料理を45分行った場合は、合計で90分のサービスですが、1回分になります。
生活援助を行う際は、ご利用者様の生活リズムや健康状態を最優先に考えることはもちろん、月の上限回数と2時間ルールも考慮した適切なサービスを提供しなければなりません。
生活援助の内容
この章では、生活援助の主な内容を紹介します。
- 料理
- 掃除
- 洗濯
- 衣服の補修
- 買い物
- 薬の受け取り
の6つの内容を解説します。
料理
訪問介護の生活援助ではご利用者様の食事を作る場合があります。
料理をする際には、決められたサービス提供時間内に作ることはもちろん、栄養面への配慮も必要です。
なぜなら、栄養バランスの取れた食事は、病気の予防や体力の回復に直結するからです。
しかし、栄養に気をつかっていても、ご利用者様が全て食べられるとは限りません。
ご利用者様の好みや体調に合わせた味付けにすることも大切です。
掃除
生活援助の掃除は、ご利用者様の健康や心の安定に直結する重要な要素です。
特に高齢者や障害を持つ方々にとって、清潔な環境は生活の質を大きく左右します。
感染症の予防やアレルギーの発症リスクを低減させるためにもご利用者様の身の回りの掃除は必要です。
また、散らかった部屋は転倒のリスクもあります。
生活援助の掃除は、単に部屋を綺麗にするだけでなく、ご利用者様の健康や安全を守るための重要な役割を果たします。
洗濯
ご利用者様の衣服やシーツなどを洗濯することも生活援助の一つです。
清潔な衣服や寝具は、皮膚の健康や快適な睡眠に直接関わります。
衣服の素材や色移りを考慮し、適切な方法で洗濯します。
また、必要に応じてアイロンがけをすることもあります。
スムーズなサービスを提供するためには、洗濯表示や素材についての知識を持っておくと良いでしょう。
衣服の補修
生活援助では衣服の補修をすることもあります。
ご利用者様にとって長く愛用している衣服や大切な衣服は、ボタンのほつれや少しの破れで着られなくなると悲しいもの。
衣服を補修することでご利用者様の心の安定にもつながります。
補修するときは、目立たない色や素材の糸を使いましょう。
反対に、衣服の仕立て直しや裾上げなど、一定の技術を必要とする大掛かりな補修は生活援助に含まれません。
衣服の補修は、ご利用者様の日常生活の中での小さなストレスや不便を解消するために行うサービスです。
買い物
日常生活を送る上で、食料品や日用品の購入は欠かせません。
訪問介護の生活援助における「買い物」は、ご利用者様の日常生活を支えるための重要なサービスです。
買い物を行う際は、買い物リストと代金を預かり、近くのスーパーなどで購入します。
遠方のスーパーの方が安いからと言ってそちらに行くことはできません。
また、来客用のお茶菓子などご本人以外のものやお酒などの嗜好品も生活必需品とはいえず、購入することができません。
買ってもいいか迷ったら、ご利用者様自身の支援になっているか、嗜好品に含まれていないか考えましょう。
薬の受け取り
生活援助ではご利用者様に代わって、薬の受け取りをすることがあります。
ご利用者様の中には何種類もの薬を定期的に飲む必要がある方も。
処方箋に基づいた薬の受け取りは、ご利用者様の健康を守るための重要な役割を果たします。
しかし、介護士には受け取った薬をお薬カレンダーに振り分ける服薬管理はできません。
薬に関わる介助は医療行為になる部分も多いため、看護師や薬剤師との連携も大切です。
生活援助でできないこと
生活援助はご利用者様の生活を支えるサービスですが、一部行えないこともあります。
この章では、訪問介護の生活援助でできないことを解説します。
ご家族様のための家事
訪問介護の生活援助では、ご利用者様本人を対象としてサービスを行うため、ご家族様のための家事は対象外です。
例えば、ご利用者様の食事を作る時にご家族様の分まで多めに作っておくことはできません。
掃除も、来客用の部屋やご家族様の部屋はできません。
訪問介護の生活援助は、ご利用者様が自宅での生活を続けられるようサポートすることを目的としています。
そのため、ご家族様のための家事はサポートの対象外となることを理解していただき、適切なサービスを提供することが重要です。
大がかりな家事
訪問介護の生活援助では、大掛かりな家事や専門的な技術を要する家事は基本的に行えません。
介護士の主な役割は、ご利用者様が日常生活を送るためのサポートです。
例えば、庭の草むしりや衣服の仕立て直し、おせち料理を作ることなどは日常的に行うことではありません。
訪問介護の生活援助の目的は、ご利用者様の自宅での生活のサポートです。
大がかりな家事は専門の業者などに依頼していただきましょう。
お金の管理
訪問介護の生活援助では、ご利用者様に代わってお金を管理することはできません。
金銭の取り扱いには、トラブルになることが多く、ご利用者様と介護士の双方にとってリスクが伴います。
しかし、買い物代行のため必要な金額を預かること、生活費を引き出すための外出に付き添うことは可能です。
もし、認知症などで金銭の管理に不安がある場合は、ご家族様が管理するか、日常生活自立支援事業や成年後見制度で管理してもらう方法もあります。
お金の管理は非常にデリケートな問題であり、トラブルがあった場合、ご利用者様やご家族様だけでなく事業所にも迷惑をかけることになりますので、引き受けないようにしましょう。
訪問介護の生活援助に必要な資格
訪問介護の仕事をするなら、資格が必要になります。
しかし、生活援助のみの場合、資格は必要ありません。
介護の仕事が初めてだったり、家事などのスキルに不安がある場合は、生活援助従事者研修を受講するのもオススメです。
生活援助従事者研修は、59時間で介護についての理解を深めることができます。
介護職員初任者研修などの他の資格と比べて短時間で受講できることも魅力です。
また、訪問時に身体介護と生活援助のどちらも行う場合には、介護職員初任者研修以上の資格が必要です。
なぜなら、身体介護のスキルはご利用者様の安全に関わることだからです。
資格を取ることで、介護の知識や介助のスキルを得られ、ご利用者様やご家族様にも安心して介護を任せていただけます。
生活援助はなくなる?
近年、生活援助がなくなるかもしれないと言われていますが実際になくなるのでしょうか。
結論から言うと、なくなることはありません。
しかし、サービスの内容や提供方法が変わることはあるかもしれません。
介護の需要が増加する中、効率的なサービス提供や資源の最適化が求められています。
要介護1・2のご利用者様への生活援助は総合事業へ移管する案や新しい技術を取り入れていくことも検討されています。
生活援助が完全になくなるということはありませんが、サービスの形態や内容に変化が起きる可能性があることを理解し、臨機応変な対応ができるようにしましょう。
まとめ
皆さん、訪問介護の生活援助について理解が深められましたか。
この記事を通じて、生活援助の時間区分だけでなく、具体的な内容や、それに関連する資格、さらには将来の変化についての知識も得られたのではないでしょうか。
介護の現場は日々変化しており、私たちもその変化に柔軟に対応していく必要があります。
しかし、その背景には常に「ご利用者様のため」があります。
技術の進化や制度の変更も、より良いサービスを提供するためのもの。
皆さんがこの記事を読んで、訪問介護の大切さやその魅力を再認識していただけたら幸いです。