「訪問介護の同一建物減算って複雑でよくわからない…。」
建物や人数などの基準があって難しいですよね。
しかし、わからないままだと、ご利用者様にサービス利用料を多く払わせてしまう可能性も。
そこでこの記事では、同一建物減算の基本から適用条件、減算率など細かく解説します。
全部読むと、同一建物減算になるかどうか判断し、単位数を計算できるようになるはずです。
同一建物減算とは
同一建物減算は、介護サービスにおける介護保険給付の公平性を確保するための重要な制度です。
この制度は、介護事業所とご利用者様の居住する建物が同一の場合に適用されます。
例えば、訪問介護の場合、通常であれば訪問介護員がご利用者様の自宅を訪問してサービスを提供します。
この際、スタッフの移動には時間がかかります。
しかし、介護事業所とご利用者様の居住する建物が同じである場合、移動時間が大幅に短縮されます。
同一建物減算は、このような状況を考慮し、サービス提供に対する報酬を適切に減算することで、介護保険給付の公平性を保ちます。
同一建物減算の導入により、介護サービスの提供がより効率的になり、結果としてご利用者様の費用負担も軽減されています。
これにより、介護保険制度全体の公平性と持続可能性が高まっています。
訪問介護の同一建物減算の適用条件
この章では、訪問介護における同一建物減算の適用条件について解説します。
同一建物減算は、特定の条件下でのみ適用されるため、これらの条件を正確に理解することが重要です。
同一敷地内に居住
訪問介護事業所と同一敷地内建物等に居住するご利用者様にサービスを提供する場合、同一建物減算が適用されます。
同一敷地内建物等とは、事業所と一体的な建築物、または同一敷地内や隣接する敷地にある効率的なサービス提供が可能な建物を指します。
例えば、事業所と一体的な構築物には、建物の1階部分が事業所であったり、事業所とご利用者様の居住する建物が渡り廊下で繋がっている場合があります。
また、同一敷地内や隣接する敷地の例としては、同一敷地内にある別棟の建築物であったり、幅員の狭い道路を挟んで隣接する建物の場合があります。
このような場合には、同一建物減算が適用されます。
20人以上の利用者
同じ介護事業所からサービスを受けるご利用者様の人数が1月あたり20人以上いる集合住宅等も同一建物減算が適用されます。
これは、さきほどの同一敷地内に居住する場合を除きます。
事業所とご利用者様の居住する建物が同じ敷地内でなくとも、その建物にサービスを利用する方がたくさんいれば、効率的にサービス提供ができるため、同一建物減算の対象になります。
しかし、その集合住宅に介護保険サービスを利用する方が20人以上いても、利用する事業所がバラバラであれば、同一建物減算の対象になりませんので、注意しましょう。
訪問介護の同一建物減算の減算率
同一建物減算が適用される場合、指定の減算率を乗じてサービス利用料を計算する必要があります。
例えば、訪問介護では以下の表のとおり、減算率が決まっています。
訪問介護(訪問系サービス) | |
同一敷地内建物に居住している利用者 同一建物に利用者が月に20人以上の場合 |
同一敷地内建物に居住する利用者が50人以上の場合 |
10%減算 | 15%減算 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | |
同一敷地内建物に居住している利用者 同一建物に利用者が月に20人以上の場合 |
同一敷地内建物に居住する利用者が50人以上の場合 |
600単位/月減算 | 900単位/月減算 |
訪問介護の同一建物減算適用時の注意点
この章では、訪問介護における同一建物減算を適用する際の重要な注意点を解説します。
適切な適用を行うためには、以下のポイントを理解し、適切に対応することが不可欠です。
別法人でも対象
介護事業所と建物が異なる法人によって運営されていても、同一建物減算は適用されます。
同一建物減算の目的は介護サービスにおける介護保険給付の公平性の確保であり、これは事業所と建物の運営主体が異なる場合でも変わりません。
例えば、同一建物減算の適用条件で紹介した、20人以上のご利用者様がいる集合住宅では、必ずしも介護事業所が併設されているとは限りません。
事業所と建物の運営主体が違っても、移動時間が短縮されるサービス提供であれば、介護保険給付の公平性を保つため、同一建物減算が適用されるのです。
効率的なサービス提供が鍵
効率的なサービス提供ができるかどうかが、同一建物減算適用の鍵となります。
例えば、効率的なサービス提供ができない例として、主に以下の2つが考えられます。
・同一敷地内でサービスを提供していても、広大な土地で建物が点在する
・道路、河川などで横断するために迂回が必要
本来であれば、同一敷地内のサービス提供や道路を挟む建物の場合には同一建物減算が適用されます。
しかし、このような場合には効率的なサービス提供ができないため、減算が適用されません。
20人は当月平均
20人以上のご利用者様がいる集合住宅等とは当月平均が20人以上かどうかで減算の対象になるかならないか決まります。
例えば、ある月にご利用者様が15人だった集合住宅で翌月に20人に増えた場合は、翌月分から減算の対象となります。
反対に、ご利用者様の人数が減った場合には、減算の対象ではなくなります。
適切な対応をするためにも、20人以上の基準は当月平均であることを覚えておきましょう。
同一建物減算が適用される介護保険サービス
同一建物減算が適用される介護保険サービスは上記で説明した訪問介護だけではありません。
以下のサービスにも適用されます。
・訪問介護
・(介護予防)訪問入浴介護
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・通所介護
・(介護予防)認知症対応型通所介護
・地域密着型通所介護
・(介護予防)通所リハビリテーション
通所系サービスでは事業所とご利用者様の居住する建物が同一の場合のみ減算の対象となります。
訪問介護では対象となっていた、同一敷地内の別の建物や道路を挟んで隣接する建物などは減算の対象となりません。
同一建物減算の単位数一覧
同一建物減算の単位数についての一覧は以下の通りです。
同一敷地内建物に居住している利用者 同一建物に利用者が月に20人以上の場合 |
同一敷地内建物に居住する利用者が50人以上の場合 | |
・訪問介護 ・(介護予防)訪問入浴介護 ・(介護予防)訪問看護 ・(介護予防)訪問リハビリテーション ・夜間対応型訪問介護 |
10% | 15% |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 600単位/月減算 | 900単位/月減算 |
事業所と同一建物に居住の利用者 |
|
・通所介護 ・(介護予防)認知症対応型通所介護 ・地域密着型通所介護 ・(介護予防)通所リハビリテーション |
94単位/日減算 |
同一建物の定義
この章では、訪問系サービス、通所系サービスそれぞれの同一建物の定義を解説します。
訪問系サービス
訪問系サービスには、同一建物と同一敷地内建物があります。
同一建物は、事業所と構造上または外形上、一体的な建築物のことです。
事業所とご利用者様の居住する建物が、同じ建物内の違う階であったり、渡り廊下でつながっている状態のことをいいます。
同一敷地内建物は、同じ敷地内の別棟の建物のことをいいます。
しかし、同一敷地内建物であっても、広大な敷地に別棟が点在している場合は、効率的なサービス提供ができないことから、同一建物減算の対象となりません。
通所系サービス
通所系サービスの同一建物は、事業所と構造上または外形上、一体的な建築物を指します。
これは、同じ建物の別フロアや渡り廊下でつながっている建物のことをいいます。
訪問系サービスでは同一建物に含まれていた、同じ敷地内の別棟や道路を挟んで隣接する建物は、通所系サービスには含まれません。
令和3年度介護報酬改定の内容
令和3年度の介護報酬改定で、通所系サービス、多機能系サービスの、同一建物減算の適用を受けるご利用者様の区分支給限度基準額について、減算の適用前の単位数を用いることとなりました。
訪問系サービスではすでに減算の適用前の単位数で区分支給限度基準額が計算されており、令和3年度の改定でより介護サービスの公平性が高まりました。
つまり、同一建物減算の対象であってもなくても、サービスを受けられる回数が等しくなったということです。
例えば、減算の適用後の単位を用いてしまうと、区分支給限度基準額は決まっているので、1回あたりの利用料が安いとより多く利用できてしまいます。
これは、同じサービスを利用するご利用者様にとって不公平です。
介護サービスの公平性を高め、すべてのご利用者様が均等にサービスを受けられるようにするため、区分支給限度基準額には、減算の適用前の単位数を用いる必要があるのです。
まとめ
この記事を読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、同一建物減算の基本から訪問介護における同一建物減算の詳細、令和3年度の介護報酬改定内容まで、幅広く解説しました。
これらの情報が、介護サービスの理解を深める一助となれば幸いです。
公平性を期すため、介護の制度は常に進化しており、私たちもその変化に適応していく必要があります。
今後も、質の高い介護サービスを提供し、ご利用者様にとって最適なケアを目指していきましょう。