「訪問介護と居宅介護の違いって何だろう?」
似たようなサービスだし違いがよくわからない…。
しかし、違いを知らないと希望していたサービスと全然違う…なんてことになるかもしれません。
そこでこの記事では、訪問介護と居宅介護の違いを明確に説明しています。
全部読むと、どちらのサービスをどう使うかがわかります。
訪問介護と居宅介護の違い
訪問介護と居宅介護は、どちらも「在宅サービス」というサービスですが、その根底にある法的な枠組みと目的には重要な違いがあります。
訪問介護は、介護保険法に基づいて提供されるサービスで、高齢になって身体機能が低下してくると誰でも使うことができるサービスです。
一方、居宅介護は「障害者総合支援法」に基づいて規定されており、障害を持つ人々が自立した生活を送るための支援を目的としています。
次の章以降で、これらのサービスの詳細についてさらに深く掘り下げていきます。
捕捉:居宅介護と居宅介護支援の違い
居宅介護と居宅介護支援は、大きく異なるサービスです。
居宅介護は、障害者が自宅での生活を充実させるために受ける介護サービスです。
これには、日常生活の支援や身体介護などが含まれます。
一方、居宅介護支援は、介護が必要な人が最適な支援を受けられるように、手続きを代行する介護保険法保険給付対象サービスです。
ケアマネジャーがご利用者様の心身の状況や環境に応じたケアプランを作成し、そのプランに基づいて適切なサービスが提供されるよう、事業者や関係機関との連絡・調整を行います。
居宅介護支援の対象者は、要介護認定において要介護1~5と判定された方です。
このように、居宅介護は直接的な介護サービスを提供するものであり、居宅介護支援はそれらのサービスをスムーズに利用できるよう支援する役割を担っています。
制度の違い
この章では、訪問介護と居宅介護の制度上の違いについて解説します。
訪問介護
訪問介護は、介護保険法に基づく介護保険制度の中核をなすサービスです。
このサービスの主な目的は、加齢に伴う病気や機能低下を抱えるご利用者様が、自宅で自立した日常生活を送れるよう支援することにあります。
具体的には、介護職員がご利用者様の自宅を訪問し、身体介護や生活支援などのサービスを提供します。
例えば、加齢により歩行が困難になったご利用者様が訪問介護を利用すると、自分ひとりではできなかった入浴やトイレまでの移動、洗濯や料理などをサポートしてもらい、自宅での生活を続けることができます。
しかし、介護保険制度で定められた範囲内のサービスになりますので、庭の草むしりや大掃除など日常生活の範囲を超えるサービスはありません。
訪問介護は、高齢になっても住み慣れた自宅の環境で、必要な介護を受けられるサービスです。
居宅介護
居宅介護は、障害者総合支援法に基づく重要な障害福祉サービスの一つです。
このサービスの根本的な目的は、障害の有無にかかわらず、すべての人が基本的人権を享有し、日常生活や社会生活を充実させることを支援することにあります。
居宅介護は、障害を持つ人々の在宅生活を支えるための基本的な訪問サービスです。
訪問介護と同じように、身体介護や生活援助を受けられますが、65歳になると介護保険が適用され、原則として「居宅介護」のご利用者様は「訪問介護」に移行となります。
対象者の違い
この章では、訪問介護と居宅介護が提供するサービスの対象者にどのような違いがあるのかを説明します。
訪問介護
訪問介護は、65歳以上の高齢者が対象となります。
また、40歳から64歳でも特定疾病により要介護となった方は訪問介護を利用することができます。
特定疾病は以下の通りで16種類あります。
1.がん(医師が一般に認められている知見にもとづき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靱帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
ただし、全ての高齢者が訪問介護の対象となるわけではありません。
介護保険サービスは要介護度に応じて利用することができ、訪問介護は要介護1~5と認定された方が利用できます。
居宅介護
居宅介護の利用対象者は、障害の種類や年齢によって異なります。
このサービスは、18歳以上の身体障害、精神障害、知的障害を持ち、障害支援区分1以上に認定された方、または18歳未満でこれに相当する障害を持つ児童が対象です。
さらに、指定難病や特殊な疾病、事故やケガによる肢体障害や視覚障害を持ち、障害支援区分に認定された方も、居宅介護のサービスを受けることができます。
しかし、40歳から64歳未満の障害支援区分認定者(第2号被保険者)の場合、介護保険が優先されるため、介護保険の対象外となる交通事故等が原因で障害者となると居宅介護が利用できます。
65歳以上の方は、特別な事情がない限り、原則として介護保険が優先されるため、障害福祉サービスの居宅介護を受けることはできません。
このように、居宅介護の利用対象者は、年齢や障害の種類、障害の原因などによって異なります。
サービス内容の違い
この章では、訪問介護と居宅介護が提供するサービス内容の違いを説明します。
訪問介護
訪問介護では主に身体介護、生活援助や通院等乗降介助といったサービスが提供されます。
例えば身体介護では、食事介助、衣服の着替え援助、入浴介助、トイレ誘導やオムツ交換などの排泄介助、身体の清拭、体位変換など、ご利用者様の体に直接触れてサポートを行います。
生活援助では、料理、掃除、洗濯、生活必需品の買い物、薬の受け取りなど身の回りのお世話をします。
また、ヘルパーが運転する車で、病院等への通院をサポートすることもあり、乗り降りの介助はもちろん、建物への移動や受診手続きもサポートします。
しかし、介護保険サービスは自立支援が目的ですので、ご利用者様本人のサポートでないことや、日常生活の範囲を超えるサービスを提供することはできません。
来客があるからお茶菓子を買ってきてほしい、年末だから大掃除をしてほしいなどが対応できない例です。
訪問介護では、ご利用者様本人の日常生活のサポートを行います。
居宅介護
居宅介護でも訪問介護と同じく、身体介護や家事援助を行います。
身体介護であれば、入浴、排せつ、食事等の介助、家事援助では、調理、洗濯、掃除、生活必需品の買い物などのサービスがあります。
居宅介護では他に訪問介護にはない、生活等に関する相談や助言、その他生活全般にわたる援助があります。
生活に関する相談ができ、アドバイスもしてもらえると、自宅での生活がより安心なものになります。
ただし、居宅介護では、自治体によって対応可能な範囲が異なる場合がありますので、注意しましょう。
利用方法の違い
この章では、訪問介護と居宅介護を利用する際の手続きやプロセスの違いについて詳しく解説します。
訪問介護
訪問介護を利用するには、まず要介護認定の申請をする必要があります。
申請は市町村の窓口で行いますが、窓口がわからない場合は役所の福祉課にあたる部署に電話等で確認してみることをオススメします。
要介護認定には主治医の意見書が必要になりますので、申請の際はかかりつけ医がわかるよう診察券を持って行きましょう。
申請すると、次は認定調査員が自宅を訪問し、聞き取り調査を行います。
その後、介護認定審査会で介護度が決まり、結果が通知されます。
要介護1~5になれば、訪問介護が利用できますので、担当となったケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、訪問介護事業者と契約します。
これで訪問介護が利用できるようになります。
また、要介護認定には約1ヶ月かかりますので、早めに申請しておきましょう。
居宅介護
居宅介護を利用するには、市町村の窓口に申請し障害支援区分の認定を受ける必要があります。
申請すると「指定特定相談支援事業者」が作成する「サービス等利用計画案」の提出が求められるので、指定特定相談支援事業者で作成し、提出します。
市町村は、提出された計画案や勘案すべき事項を踏まえ、支給決定し、指定特定相談支援事業者が、支給決定された後にサービス担当者会議を開催します。
サービス事業者等との連絡調整を行い、実際に利用する「サービス等利用計画」が作成されると、居宅介護が利用できるようになります。
料金の違い
この章では、訪問介護と居宅介護の料金体系の違いについて解説します。
訪問介護
訪問介護の料金は、介護保険に基づいて決まっており、ご利用者様の負担額は所得により1割から3割です。
また、サービスの頻度や時間、内容により料金が変わります。
以下は料金の一覧表です。
例えば、週2回の訪問の場合、ひと月の自己負担額は5,000~1万円程度になることが多いです。
また、初回加算や早朝・深夜の加算で料金が増えることもありますが、要介護度で変わることはありません。
居宅介護
居宅介護も訪問介護と同じように、内容や時間により料金が変わります。
また、ご利用者様の負担額は基本的に1割です。
利用料計算のもととなる単位数は以下の通りです。
居宅介護の料金は基本的な単位数に該当する条件を乗じて計算されます。
例えば、居宅における身体介護を利用し、基礎研修過程修了者がサービスを行った場合、単位に70%を乗じて計算します。
30分未満の身体介護を月に10回利用すると2550単位(255単位×10回)、70%を乗じると1785単位となります。
1単位が10円だとすると、17,850円となり、ご利用者様の負担額は1割ですので1,785円になります。
共生型サービスとは
平成30年度から、介護保険と障害福祉制度において「共生型サービス」という新しい仕組みが導入されました。
このサービスは、高齢者と障害者が同一の事業所で継続してサービスを受けられるようにするものです。
例えば、障害福祉サービスを利用していても、介護保険が優先されるため65歳になると介護保険サービスに切り替わります。
利用する事業所や担当者が変わると、ストレスを感じたり、今までと同じように生活できなくなることもあります。
そのため、共生型サービスでは介護保険または障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度の指定を受けやすいようになっています。
そうすることで、ご利用者様は同じ事業所から引き続き必要なサポートを受けられるようになります。
共生型サービスは、障害福祉サービスを利用する人でも介護保険サービスへ切り替わる際、スムーズにサービスを受け続けられるようにするための重要な制度です。
まとめ
訪問介護と居宅介護の違いが理解できたでしょうか。
あなたやあなたの大切な人が自宅での生活を続けていくために、これらのサービスを適切に利用することが大切です。
介護の道は一人で歩むものではありません。
この記事が、あなたの介護に関する選択に少しでも光を当てることができれば幸いです。